大日向 エリア

    開拓者たちは、非常に苦しい生活に耐え、自然の猛威と戦った

    この開拓者たちは、非常に苦しい生活に耐え、自然の猛威と戦った。この精神の一つのあらわれとして、「卑怯」をなによりも蔑《いや》しむ気風が生れた。今日のいわゆる西部劇には、野蛮な面も、殺伐な面も大いにあるが、開拓精神を失うまいとする意図が働いている点を見逃してはならない。第四は、弱い者を徹底的に労《いた》わるという教育である。『ピーター・パン』の中には、この点も、巧く織りこんである。
     絶体絶命の境地に追いこまれたピーターが、最後の瞬間に、フックの長刀を奪い取り、形勢は逆転する。今度はフックが、帆柱のところに追いつめられ、今やピーターの一撃のもとという窮地におちいる。するとフックは、もう恥も外聞もなく、手を合わせて「なんでもお前の言うとおりにするから、生命だけは助けてくれ」と、ひたすらに頼みこむ。
     この前に、フックは、偽手紙をつけて、ピーターに爆弾を送って、殺そうとしたこともあり、インディアンの酋長の可憐な娘を海中に沈めようとしたこともある。あらゆる兇悪かつ卑劣きわまる悪業の数々を重ねている。その酬いを、ここでフックに思い知らすわけであるが、ピーターの要求は、フックに「私は卑怯者《コッド》だ」と言えというのである。さすがのフックにも、これはこたえるらしいのであるが、とうとう渋々「私は卑怯者だ」と言ってしまう。「もっと大きい声で言え」とピーターにどなられて、自暴《やけ》くそな顔付きで、大声に「私は卑怯者だ」と答え、それで許して貰うわけである。
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